ウクライナ危機を解決するためには

原点に立ち返ってみよう

もう何年も続いているように感じるが、ロシアの侵攻が始まったのはわずか8か月前。その時に、プーチン氏は「ウクライナNATO加盟を思いとどまらせる」ために始めたと明言している。NATOの仮想敵国はロシア一国だ。欧米のみならず、すぐ隣の国まで加盟して大砲を構えられるのはもちろん勘弁してほしいだろう。

本来ならそこで自ら鎧を脱ぎ、話し合いを申し入れるべきだったが、プーチン氏はウクライナ国民の対ロ感情を読み違えて侵攻してしまった。

長い年月ロシアに無理難題を押し付けられてきたウクライナにしてみればたまったもんじゃない。以前から裏でオモテで頼りにしていた米国に泣きつくことになる。

いっぽう米国およびNATOは「とりあえず停戦させればいいだろう」くらいの読みで兵器を供与した。まさかこんなに長引くとは思わないから、ハイマースみたいな強力な武器ではなく、最初は一台の戦車をピンポイントで撃つジャベリンのような、いわば無難な兵器を供与していた。

 

意地と意地とぶつかり合い

米ロともに予想外だったのは、ウクライナの反露感情。二度と支配下に置かれたくないという強烈な思いは、ロシア軍を食い止め、むしろ押し返す。兵士も一般市民の多くも、リーダーたるゼレンスキー氏の決意に賛同した。

そのため、ロシアもやめるにやめられす、米国・NATOも手を引く機会を逸してしまった。だらだらずるずる、いわば成り行きで止められないのがこの紛争である。

 

根本原因はNATO

当初から恐怖政治のなかでデモが行われ、今回の動員令で多くのロシア国民が逃げ出した。いくらプーチンが「大国の再建を」と思っても(本人も否定しているらしいが)、ロシアという国家がそれを目指しているとは思えない。プーチンが国民生活を改善してこられたのも、おそらく原油の輸出などのおかげ、グローバル化した経済のたまものだろう。それを二の次にして侵攻を図ったのは、よほどNATOが怖いに違いない。

 

NATOはほんとうに必要か

これはいろいろと意見を言う人がいるのでいちがいに断ずることはできないのかもしれないが、そもそも仮想敵国がロシア一国であり、そのロシアがその存在を恐れているなら、交渉の余地は最初からあったのではないか。

NATOが拡大してきたのは、冷戦およびその終結後もロシアが軍事力を保持し、いつまた刃を向けてくるかわからないと考えてきたからだろう。

しかしその一方、ロシアが軍事力を強化してきたのもNATO加盟国が増え、その兵器も徐々に膨大なものになってきたからだと言える。

もしそうであるなら、西側が「NATOは解体する。だからロシアも軍事力を廃棄せよ」と交渉に持ちこめば、時期や規模などさまざまな懸案事項はあるが、基本的な方針として合意することができたのではないだろうか。

 

いまからでも遅くない

いやすでに多くの生命を失い、ウクライナのあらゆるインフラ、経済、文化その他を棄損してしまったのだから遅きに失していると言えよう。だが、一日も早くこの戦争を終わらせることは、ウクライナ国民のためだけでなく、第三次世界大戦を目の前にしている世界中の人類のためでもある。

いますぐに火種である「NATO」の解体をタイムテーブルに乗せ、ロシアの頑迷な武力主義を交渉で打ち破らなければならない。

 

だれがやるのか

すでに拳の降しどころを見失っているプーチン氏にもバイデン氏はじめNATO諸国にも自ら言い出すことはできまい。いまもプーチン氏とのパイプを保持するトルコのエルドアン氏や両陣営に等距離外交を展開するインドのモディ氏を軸に、ロシアに近い中国や米国に近い日本の首脳が汗をかく必要があるように思われる。

 

ここまで書いていたのだが、今月20日から中国の習近平主席がプーチン大統領と会談することになった。サウジとイランの仲をとりもった習氏がロシアとウクライナの仲をもとりもとうと考えているのかもしれない(プーチン氏のあとゼレンスキー氏とも会談する予定)。もちろん、それは米国から中国に世界の中心が動くということでもあるが、米国にその考えも、その力ももはやない。

もし中国が、本気でウクライナ戦争の解決に踏み出すのであれば(ほんとうにそうなのか、しっかり確認する必要があるが)、リーダーシップのかけらもなかった日本だが、NATO解体に向けて汗をかくことを前提に、習氏に協力することができるのではないだろうか。中国にすり寄るというわけではないが、西側のなかでは最もニュートラルな立場として、また平和を旨としてきた国家として、持てる知恵のすべてを結集して、紛争解決に協力してほしいと思う。